大会長 齋藤 益子
 関西国際大学保健医療学部教授
 東邦大学名誉教授

日本「祈りと救いとこころ」学会
第8回学術研究大会によせて

                         

学術研究大会長を務めます齋藤と申します。これまで特別な宗教とはあまりご縁がなく、切羽詰まると、「神様、お願い」と、つい不特定多数の神様に向かって祈り、お正月には神宮に初詣でに行き、お盆にはお寺に墓参りに行き、ヨーロッパに旅行すれば教会のミサに参加する多宗教徒の一人でした。「祈る」という行為は、宗教に関係なく、偉大なるものに対する畏敬の念と共に人々の心の中で自然に芽生える思いとして育ってきたように思います。

私は、助産師として長い時間多くの女性に関わって参りました。産婦人科病棟は誕生と死が隣り合わせにあり、分娩室で元気な赤ちゃんの誕生に立ち会った後に、末期がんの女性を看取り、また、産めない女性の人工妊娠中絶に立ち会うこともありました。その中で、自分の力が及ばない時は、最後には神に祈るしかないことを認識しています。女性たちは、一生のなかで、心の安寧を求めて手を合わせることが多いと思います。そこで、今回のテーマは「女性の一生と祈り(いにしえ)からの女性の生き方を通して」と、致しました。

今日のわが国の女性たちは何を思い、何を信じて生きているのでしょうか。ふと、平塚らいてうの言葉が頭に浮かんできました。「元始、女性は実に太陽であった。真心の人であった。今、女性は月である。他によって生き、他の光によって輝き、病人のような蒼白い顔の月である。」という言葉。平塚らいてうは明治に生まれ、大正・昭和にかけて女性解放運動を推進した思想家です。昭和から、平成、令和と女性たちは解放され、再び太陽として輝いており、自由で自分らしい生き方を選択出来るようになりました。社会的な役割も担うようになり、結婚・妊娠・出産・育児はワークライフバランスから、時期を選ぶようになり、産まない選択や産める時期を逃してしまう女性もいて、ここ数年の出生率の低下は、ついに年間出生数が80万を切ってしまいました。子どもを産むことはとても大切な人生の選択なのです。子どもを産み育てることは、女性の人生を明るく豊かにし、出産は至高体験であるともいえます。太陽のように輝く女性の傍らには、天使のような子どもたちが群がってこそ素晴らしい人生になるのではないでしょうか。

今回の学術集会では、女性の一生を様々な立場から語って頂きます。教育講演として宮崎県立大学の大舘真晴先生に「古代からの女性の生き方」、基調講演として津田塾大学の三砂ちづる先生に「女性の一生と祈りー琉球弧から」、そして、市民公開講座では田島陽子先生の生き方を語って頂きます。
 これらの皆様のご講演をお聞きしながら、女性たちが真に太陽のように輝くためにどうあったらよいのか、参加者の皆さんと考えてみたいと思います。今回は3年ぶりに対面で開催させて頂きます。企画運営に関わって頂いた準備委員会の皆様に感謝し、会員のみならず関心をお持ちの多くの皆様のご来場を心からお待ちしています。